2012年7月26日木曜日

発電方式を整理してエネルギー問題について考える

福島の原発事故がもたらした日本のエネルギー政策の行方は、未だ方向が定まっていないようですが、エネルギー問題を根本から考えるためにはまずは全体像を見渡すことが重要だと考え、自分なりに様々な発電方法を分類してみました。

なお、分類と用語を統一させるために、火力発電を火熱発電に、原子力発電を核分裂熱発電、核融合熱発電と表記しました。こういう造語が一般化するとは思いませんが、原子の力で直接電気を生み出すようなイメージを与える「原子力発電」という言葉は、人の考えを誤った方向に導く恐れがあるのではと考えますので、ここでは試験的に別の言葉で置き換えてみました。

  • 発電機(電磁誘導の法則を利用して機械的エネルギーから電気エネルギーを得る装置)による発電方法 ( )内は使用される燃料源
    • 汽力方式・・・発生させた水蒸気でタービン発電機を回す外燃機関で電力へ変換する方法
      • 燃料を化学変化、あるいは核反応させて熱を得て蒸気を発生させる発電
        • 火熱発電(石炭、石油、天然ガス、可燃ゴミ)
        • 核分裂熱発電(ウラン、プルトニウム及びトリウム)
        • 核融合熱発電(水素、ヘリウム)
      • 自然界の現象から直接蒸気を得るか、直接熱を得て蒸気を発生させるか、温度差によって媒体を気化させて蒸気を発生させる発電
        • 地熱発電(地球)
        • 太陽熱発電(太陽)
        • 海洋温度差発電(海水)
    • 内燃力方式・・・燃料の燃焼で放出される化学エネルギーでタービン発電機を回す内燃機関で電力へ変換する方法
      • 動力として主に航空機、戦車などで使用されるガスタービンエンジンによる発電
        • 小規模自家発電装置による発電(灯油、軽油)
        • 天然ガス発電所や、火力発電所などで緊急用の設備として設置されるガスタービン発電(天然ガス、水素)
        • 炉頂圧回収タービン発電(製鉄所の高炉で発生するガス)
        • 冷熱発電(天然ガス)
      • 動力として主に自動車、船舶、鉄道車両などで使用されるレシプロエンジンによる発電
        • 小規模自家発電装置による発電(ガソリン、軽油、アルコール)
        • 離島などに多い内燃力発電所に設置されるディーゼルエンジンによる発電(重油、軽油)
    • コンバインドサイクル方式・・・内燃力発電の排熱で汽力発電を行う複合的方法
      • 内熱機関としてガスタービンエンジンを回しつつ、その際に出た熱を回収して蒸気を発生させることによってもタービンを回す発電
        • 天然ガス発電所などで設置されるガスタービン発電(天然ガス)
    • 直接動力方式・・・自然界で起こっている現象による動力源で直接発電機を動かし電力へ変換する方法
      • 水の流れでタービン発電機を回し電力へ変換する発電
        • 水力発電
      • 風の力でタービン発電機を回し電力へ変換する発電
        • 風力発電
      • 海水の流れや波の力でタービン発電機やジャイロ式発電機を回し電力へ変換する発電
        • 海流力発電
        • 潮力発電
        • 波力発電
      • 人間がタービン発電機を回し電力へ変換する発電
        • 田中ぷにえの魔法の国などで行われている人力発電
  • 別のエネルギーを直接電力に変換する発電方法
    • 太陽光発電・・・太陽光によって電力を取り出す装置(太陽電池)による発電
    • 燃料電池発電・・・電気化学反応によって電力を取り出す装置(燃料電池)による発電
    • 熱電発電・・・熱電変換素子による発電
    • 振動発電・・・圧電素子による発電
    • 磁気流体力学(MHD)発電・・・ファラデーの電磁誘導の法則を利用する発電


こうして一覧でまとめてみると、根源的な問題が見えてくるのではないでしょうか。
例えば、核分裂熱発電と表記した原子力発電ですが、全体から見ると実はずいぶんと古くさい原始的な発電方法なのではないかと思えてきます。広瀬隆氏も言っておりますが、たかがお湯を沸かすために事が起きると何十年も近づくことも出来ない危険な物質を扱ってこんな壊滅的な事態になっているとは非常にバカバカしい思いすらします。
むろん、安全性や発電効率を高めた第4世代原子炉と言われる原子炉の新技術はいろいろと研究されていて、現在の主流である第3世代原子炉でも福島第一原発の第2世代原子炉より安全性は高まっているそうです。しかし、放射性廃棄物の問題は依然として残ります。それが解決されるような新技術の開発を日本が率先してやるべきなのか、やれるのかということについては、新技術開発に伴う危険性や、日本の原子力工学に優秀な人材がいるのか、今後集まるのかという観点から大いに疑問を感じます。
そこで原子力発電に代わる有力な発電は何かということですが、やはり、天然ガスによるコンバインドサイクル発電(GTCC)が最も現実的であるというのが全体を見通した上での結論になります。これは広瀬隆氏から池田信夫氏まで原子力に対して大きく立場の違う人達の間でも共通する認識のようです。
コンバインドサイクル発電は機械的な技術発展により発電効率の上昇を目指した方式のため、科学に対する夢のようなものは感じられず地味な印象を与えますが、その発電効率と安定性は十分に今の原子力発電の代わりになり得るものであり、また環境への負荷も少なく、天然ガスの埋蔵量も近年の発見により少なくとも300年はあるとされています。

一方、自然エネルギーというか再生可能エネルギーについては発電方法も様々で、あまりひと括りにしない方がいいのかもしれません。また、環境への負荷が少ないと言っても大量の風車や太陽光パネルが並ぶ光景は決して良いものではありません。特に風車には音の問題もあり慎重に考えるべきでしょう。ただし、太陽光発電などは大いに研究開発を進めるべきかと思います。先日、ナノテクノロジーと量子力学の新理論を適用し驚異的な性能を実現できるかもしれない「量子ドット太陽電池」という技術の開発が報道されましたが、科学史的なブレイクスルーを秘めているのは今後も更なる発展発見が期待される量子力学をバックボーンに持つ太陽光発電であり、その基礎研究には大いに注力すべきだと考えます
また、再生可能エネルギーには波や潮力といった海が持つ力を利用した発電方法が多いというのも分かりました。今回の大震災で三陸沖の多くの海岸沿いの街が壊滅的打撃を受けましたが、海を利用した複合的発電設備をそのような場所の近海に設置して、沿岸を再生可能エネルギー特区にするようなことも考えられるかもしれません。
この他にはエネファームとして知られている家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどがありますね。これは都市ガスなどを燃料に燃料電池から電力を発電し、そのとき発生する熱も利用する方法で、全体のエネルギー効率では火力発電に劣るそうですがなかなか進んだシステムなのだと思いました。太陽光発電と比較すると不利な点も多いようですが安定性という観点からも今後の発展が期待されます。

以上、発電について考えてみましたが、言うまでもなく送電も大きな問題です。これは発送電の分離という政治的な問題も絡んでいるようですが、スマートグリッドの推進など政府は新たな送電のあり方に積極的に取り組んで欲しいと思います。


最後に改めて原子力発電について考えてみたいと思いますが、コンバインドサイクル発電がいくら優れていると言ってもそれにあまりにも依存し過ぎるのはエネルギーの安全保障という観点から危険であると考えます。天然ガスの埋蔵量が従来考えられていたよりも豊富であるのは間違いないのでしょうが、日本の領土内にどれだけあるのかというのは不安ですし、外国からエネルギーを買うリスクは常に考えておくべきでしょう。エネルギーの利権争いから紛争に発展することもあります。したがって、当面は原子力という選択肢も残しておくべきだと思います。ただし、長期戦略を立てて徐々に減らしていくということは絶対に必要だと思います。

私の考えでは原子力というのは、20年前の社会主義国家の崩壊によってもたらされたイデオロギーの終わりが歴史における「大きな物語」の終焉、いわゆるポストモダニズムとして認識されている中で、今日まで残ったテクノロジーによって書かれた「大きな物語」ではないかと思うのです。
それは、原爆と原発を同一線上で考える「核の物語」に囚われている反原発の人達にとってもそうであると言えますし、中沢新一や内田樹のように原子力を一神教的な神の如きものと見なす人達にも言えるのです。
しかし一方で、日本の政治経済における権力内部を覆っているのもまた、戦争と大量消費社会の20世紀を裏から支えた原子力を主人公とする「大きな物語」なのではないでしょうか。

この「大きな物語」は、原爆という呪われた出自を封印しつつ、資源の乏しい敗戦国である自由主義経済国家の発展を設定する世界観として、長年この国で読み継がれてきましたが、それはあくまでも「物語」であり、2011年3月11日でその結末を迎えたと考えるべきです。

原子力村と称される人々が長年信じてきたこの「物語」は、ソ連崩壊後も社会主義にしがみつく頑固な共産党員が読むマルクスのように揺るぎない真実として信奉されているのです。
「原子力利権」などというものは確かに存在するのでしょうが、人は金だけでは動かないし、むしろその人の内側奥深くに入り込んで出口を失った「物語」の方が強く人を縛り続けるのでしょう。

政治経済の中心にいるような人達がこの「大きな物語」から脱却すること。そのことが脱原発の第一歩ではないかと思います。