2013年8月1日木曜日

ジブリの新作アニメが公開される度にやる怒濤のプロモーションはあれでいいのだろうか

漫画家のとり・みき氏による宮崎駿監督作品『風立ちぬ』の批評を読んだのですが、冒頭に「本当にそうだな」と思うようなことが書いてありました。

もはや宮崎アニメと村上春樹作品は、新作がリリースされれば、人は皆なにがしかの感想なり批評なりを述べなければいけないような雰囲気になっている。誰からいわれたわけでもないのに、おのれの見解と立場を表明しなければいけないような圧力が、少なくとも私のTLには充ち満ちる。かくして多くの人は、他人の顔色をうかがいながら恐る恐るつぶやく。

求められてもいないのに。

いや、批評家や評論家の人はいいのですよ。それが仕事だから。

こう見えても私は本業でマンガ家をやっているので、他人の、とくに自分に近いジャンルの創作物の批評には慎重だ。あたりまえだ。発する言葉はすべて自分に返ってくるからだ。

そういうことに覚悟を決めて、あるいは棚によじ登って、あるいはまったく無自覚で、気軽に辛辣な感想をつぶやいている創作者もいるけれども、あいにくなのか幸いなのか、私は覚悟も棚も無自覚も持ち合わせがないので、求められていなければ、たいていの場合スルーする。

誰も彼もがブログやSNSなどで「宮崎アニメと村上春樹作品は、新作がリリースされれば」こぞって批評めいたことを書きたがるというのは、ネットを眺めていればよく分かりますね。

かくいう私も、昔はそういうことをやっていました。
たいして興味のない『崖の上のポニョ』などを見ては、人が言わないような部分をクローズアップしたり知能の足りない人が腹を立てるようなことをブログに書き一時的に話題になっては、「フッフッフ」などと一人ほくそ笑んでいたものです。

しかし、こういうことは文章を書く練習や人々の反応を知るには良い経験でしたが、それ以上のものは何もありませんでしたね。

昔は「批評なんていうのはブログに書くべきもので、わざわざ本にするべきものではない」などと考えていましたが、それは間違っていました。
批評を書くのなら本に書くべきなのです。
紙の本でなくても、有料の独立した形態ならば電子ブックでも良いのですが、いずれにせよ、批評のようなものをちょろちょろと日記気分で書くようなことは間違っていると思うようになりました。

特に、とり・みき氏が書いているように、創作をやっている人が批評を書くというのは、よほどの覚悟がない限りやるべきではないでしょう。
とり・みき氏は「あるいは棚によじ登って、あるいはまったく無自覚」とソフトに書いていますが、ようは「恥知らず」ということです。

これは「自分に近いジャンルの創作物の批評」についてですが、そういう恥知らずな人間が自分のやっていることから遠いジャンルの批評を書く場合、自分のテリトリーの知識だけで分かったような気になって、半端な技術論を振りかざす批評などを書いてしまうのです。

こういうのは批評された側からすれば、「いや、お前映画撮ったことないだろう」みたいな反応しか生まないのですね。
「誰が言ったのかはどうでもよい。意見は意見として読んで欲しい」みたいなことを言う人もいますが、これは違います。
批評というのは、「誰が言ったか」という前提からは逃れられないのです。

とにかく、この手の批評をやりたいのか創作をやりたいのか、どちらにせよ自分を偉く見せたいというタイプの人間の書くものは読んでいるこちらが恥ずかしくなってしまいます。

しかし、人は他人の恥ずかしさを求めるという困った習性があるので(私にもあります)、それなりに読まれてしまって需要と供給の悪循環に嵌まってしまうようです。
言わずもがな、私も気を付けなければいけないということです。


ところで最近、テレビで現在公開中の映画『風立ちぬ』のプロモーション番組を盛んにやっていますね。
8月26日放送のNHKドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも、いつもの宮崎駿監督の密着取材をやるようです。

番組最多となる3度目の出演だそうで、『千と千尋の神隠し』と『崖の上のポニョ』に続いてということでしょうか。『仕事の流儀』ではないのでしょうが『もののけ姫』でも制作過程のドキュメンタリーをやっていました。
ジブリは宮崎駿監督作品以外でも近年は新作公開の度にこういう番組をやっていますね。少なくともNHKと日テレでは必ずやるのではないでしょうか。

今回のプロモーション番組も既に2つくらい見ました。
中には結構詳細に作られた数分間のダイジェストを流している番組もありましたが、さすがにあれはどうなんだと思います。
正直、見る前に「お腹いっぱいだよ」という感じになってしまいます。

ジブリのああいう体制だとある程度の興業成績を求められるのか、宣伝を大々的にやらなければならないのかもしれませんが、逆にやりすぎると飽きてきて、「今見なくてもいいか。どうせ、1年半後くらいには金曜ロードショーでやるんだし」みたいな気になってきます。

しかも困ったことに、宮崎監督、鈴木プロデューサーともキャラが立っていて、下手したら本編のアニメより制作ドキュメンタリーの方が面白かったりするから厄介です。

それでも、映画館に行って見てしまうのはブログに批評を書かないと気が済まないから、という人も多いでしょう。

こういうことも含めて、ジブリの新作アニメは現代日本の祝祭のようなものなのかもしれません。

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